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判例紹介

【審判例紹介】長期間の別居がある離婚時年金分割の按分割合

判例雑誌に離婚時の年金分割に関する審判例が掲載されていましたので、取り上げることとしました。

(事案)
Xは、Yとの婚姻後、約9年間Yと同居した後に別居するに至り、婚姻から約44年経過した後に離婚しました。

離婚後、XがYに対し年金分割の審判を求めたところ、原審は、婚姻期間に比して同居期間が短く、年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等と見ることが著しく不当であるような特別の事情があるとして、按分割合を0.35とする審判をしたので、Xはこれを不服として高等裁判所に抗告しました。
(高裁の決定)
高等裁判所は、基本的には原審と同じ判断枠組みに立ちつつ、老後のための所得保障は、夫婦の一方又は双方の収入によって、同等に形成されるべきとの見地から、別居や、別居か長期間に及んだことについてXに主たる責任があるとまで認められないことなどを根拠として、本件では上記のような特別の事情があるとは言えないとし、原審を変更し按分割合を0.5としました(大阪高等裁判所令和元年8月21日決定)。

実は最近、似たような年金分割事件を担当したことがありまして、審判例と同様に長期間の別居後に離婚に至ったという事案でした。具体的には、約60年間の婚姻期間中のおよそ半分の期間を別居していたという事案ですが、この件についても結論はやはり本件と同様に按分割合は0.5とする結果でした。

担当した事案では、別居の原因が専ら相手方配偶者にあると考えられる事情があり、按分割合が0.5を下回るのは依頼者にとってさすがに酷と思われるような事案でした。しかし、審判ではその点が特に争点になることはありませんでした。

したがって、基本的には婚姻期間と別居期間の比較のみで結論を出したと考えられますが、婚姻期間の約半分が別居であっても、保険料の納付に関する寄与の度合いが夫婦同等であることは否定されなかったということになります。

保険料の納付は、資産の形成と通じるものがあると考えられます。一方、配偶者の納付実績に対する他方配偶者の寄与を論じるには、同居の継続が前提となるようにも思われますが、裁判所としては老後のための最低限の所得補償という公的年金の制度趣旨をより重視しているのかもしれません。
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