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過払金とは?⑤みなし弁済規定の廃止へ

これまでにご紹介してきた「みなし弁済制度」は、利息制限法の法定利率を超える利息の支払いを有効とみなしたため、貸金業者による高利での貸し付けを助長しました。その結果、多重債務者が増加し、貸金業者の厳しい取立てにより自殺者が増えるなど大きな社会問題となりました。

社会内で問題意識が蓄積され、みなし弁済の要件は厳格に解釈するべきとの裁判所の判断が数多く出されるようになりました。そのような中で、最高裁平成18年1月13日判決(判タ1205号99頁)が出されました。

この平成18年判決は、みなし弁済規定について以下のように判示しました。

「…貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきである…。

そうすると,法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい,債務者において,その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解される…けれども,債務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

…そして、本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。

したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」

この平成18年判決により、実質的にみなし弁済規定の適用が否定されたといわれています。これ以降、下級審の裁判例でもみなし弁済を認めるものはなくなっていきました。そして、この判決をきっかけとして平成18年に貸金業法が改正され、みなし弁済規定は削除されました。

また、出資法も改正され、刑事罰が科される上限金利が20%に引き下げられました。これにより、いわゆるグレーゾーン金利とされていた部分が廃止され、利息制限法の法定利率を超える金利は刑事上も違法な金利となることとなりました。