2019.11.23 弁護士ブログ
法諺(ほうげん)について
わが国の民法典の起草者の一人である穂積陳重(ほづみのぶしげ、1855~1926)という法学者の著作に、『法窓夜話』という随筆集があります。内容は法律や司法の世界に関するちょっとした小話をまとめたもので、弁護士として読んでいて大変面白いです。中でも、西洋の古い法諺が多く紹介されていて興味深いものがあります。
「法諺」とは聞きなれない言葉ですが、分かりやすく言うと、法律に関する格言あるいは法律に関する俚諺(ことわざ)と言ったところで、法の本質を端的に言い当てたものもあれば、ウィットに富んだ風刺的なものもあり多種多様です。同書の中からいくつか紹介しましょう。
Ignorantia juris non excusat.
法の不知はこれを許さず。ローマ法由来の格言で、直訳すると「法を知らないことは言い訳にはならない。」となるでしょうか。法律の学習をしたことのある人なら、刑法総論の錯誤に関する論点でこの言葉を聞いたことのある方も多いと思います。
Better no law than law not enforced.
行われざる法あるは法なきにしかず。
法律は、遵守されてこそはじめて法たりうるということでしょう。
弁護士に関するものも挙げてみましょう。
A good lawyer is a bad neighbor.
よき法律家は、悪しき隣人である。
人口に膾炙するフレーズであり、聞いたことのある方も多いと思います。
The more lawyers, the more processes.
弁護士多ければ訴訟多し。
法曹人口の問題と関連するものであり、現代にも通じる側面があると言えます。
そのほかにも、以下のようなものも載っていました(敢えて訳しません)。
Fools and obstinate men make lawyers rich.
He who is his own lawyer has a fool for his client.