2024.1.17 その他
保全処分・強制執行について
弁護士法人はるか長野法律事務所は、保全処分、強制執行に強い事務所です。当事務所は仮差押え、仮処分などの保全や、強制執行、強制競売、強制管理など、相手の財産を押さえて債権を保全したり、相手の財産から債権の回収を図る手続きに精通しており、重要な専門分野としております。これらの分野は、教科書や法律書に書かれている事だけではうまく結果を出すことは困難で、実務経験が必須です。私どもは、実務経験を積み重ねることによって、また法制度を絶えず研究することによって、皆様の需要に応えてまいります。
保全処分
1.仮差押とは
仮差押は、債権者が債務者から将来勝訴判決をとって支払いを受けるため、予め財産を仮に押さえておく法的手続きです。裁判所の命令が必要で、特定の財産が対象となります。債務者は異議を申し立てて、仮押さえが正当であるかどうかを争うことができます。
- 1.仮押さえの目的:
債権者保護: 将来勝訴判決をとって債権者が債務者からの支払いを受けるために、債務者の財産を仮に押さえることがあります。
- 2.仮押さえのプロセス:
- 債権者は、債務者に対する債務を疎明し、裁判所から仮押さえの命令を得る必要があります。
- 仮押さえの対象となる財産は、不動産、自動車その他動産、銀行預金、売掛金などの債権が含まれます。
3.仮差押の担保
仮差押をする場合、債権者は裁判所が定める金額の担保を金銭の供託の方法により立てなければなりません。これは、仮差押が正当でなかった場合、即ち債権者が訴訟で敗訴した場合に債務者の損害を賠償するためにその担保として要求されるものです。
4.仮押さえの期間:
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- 債務者が債務を完済するか、敗訴して債務がないことが確定すると、仮押さえは解除されます。
5.仮押さえの効果:
債権者が勝訴判決を経て確定すると、債権者は判決に基づき仮差押をしていた債務者の財産を本差押え(強制競売)することができ、それによって債務者の財産は競売によって売却され、売却代金が債権者の債権の支払に充てられます。
6.債務者の権利:
債務者が勝訴して債権者が主張していた債権の不存在が確定した場合は、債務者は仮差押を受けたことによって被った損害の賠償を債権者に請求することができ、裁判所(債権者が同意しない限り訴訟によります)が債務者の損害として認めた金額を債権者が提供していた担保の中から支払いを受けることができます。
2.仮処分とは
仮処分にはいくつかの種類があります。
- 処分禁止の仮処分
勝訴判決を確定させて強制執行を行う前に、債務者が財産を処分することを防ぐ目的で使われます。この仮処分は、不動産や動産など特定物に対する権利(それらが債権者に帰属するから債権者に引渡しを求める訴訟を提起するか既にしている場合など)に用いられます。債権者勝訴判決が確定した場合、当該対象物に関して勝訴判決で認められた権利(例えば引渡し)を強制執行によって実現することになります。
2.仮の地位を定める仮処分
様々な地位が対象となりますが、例えば株式会社の取締役を不当に解任された場合に、仮に取締役の地位に留まり続けることを裁判所の決定で認めてもらう場合などです。債権者勝訴判決が確定した場合、仮の地位の場合はそれが「仮」ではなくなり本来の地位となります。
3.断行の仮処分
ある債務の存否について争いがある場合、債務の履行を命ずる確定判決が出る前に、仮に債務を履行させる裁判所の決定によって履行させるものを言います。例えば、物の引渡しについて、仮に引き渡せと言って引き渡させるものですから、判決を待たずに勝訴したことと同じ結果を暫定的にもたらします。他の仮処分より要件が厳格で、担保の金額も高くなります。断行の仮処分も将来勝訴判決が出た場合にそれを実現することが、判決を待っていては時期を逸して判決の意味がなくなることを防ぐために行われます。債権者勝訴判決が確定した場合、仮に行われた処分は終局的な処分となります。
4.債務者が勝訴した場合
この場合仮処分は取り消され、債権者は処分禁止の仮処分であれば当該財産を拘束できなくなり、又仮の地位を定める仮処分でば、債権者はその地位を失います。断行の仮処分では債権者は履行されたものを返還し原状に復する義務を負います。債務者は、仮処分によって被った損害を債権者が立てた担保から弁済を受けることができます。
3.強制執行とは
裁判所の判決や命令を履行させるために法律に基づいて行われる手続きです。これは、判決や命令が自発的に履行されない場合に、国の強制力を用いて履行させることを意味します。以下は、強制執行の制度の内容です。
- 強制執行の種類
- 金銭債務の強制執行:債務者の資産を執行官が裁判所の命令に基づいて差し押さえ、それを執行官が裁判所の決定にしたがって売却して売却代金を債権者に支払います。
- 非金銭債務の強制執行:例えば、物の引渡しや特定の行為の実行などが含まれます。これらも裁判所の命令・決定に従って執行官が強制的に行います。
- 尚、他の強制手続きでも同じですが、執行官の行為を妨害すると公務執行妨害罪に問われます。
- 強制執行の手続き
- 執行文の付与:裁判所が判決や命令に基づいて執行文を付与します。
- 執行の申立て:債権者が執行文を基に執行機関に申立てを行います。
- 執行の実施:執行官が債務者の資産を差し押さえたなどの行動を取ります。
- 強制執行の制限
- 法的保護:債務者の最低限の生活を保護するため、一定の資産は差し押さえから除外されます。
- 異議申立て:債務者は強制執行に対して異議を申し立てることができます。
- 国際的な側面
- 国際的な強制執行:異なる国の裁判所の判決を別の国で強制執行する場合、特別な手続きが必要になります。
- 実務上の考慮事項
- 費用と効率:強制執行は費用がかかるため、債権者は費用対効果を考慮する必要があります。
4.強制競売とは
債務不履行の結果として行われる法的手続きの一つです。具体的には、以下のようなプロセスで進行します。
債権者の申立て: 債務者が債務を履行しない場合、債権者は裁判所に対して強制競売を申し立てることができます。
裁判所の判断: 裁判所は、申立てを受け、債務者が所有する不動産などの資産に対して強制競売を命じます。
公告: 強制競売が決定されると、裁判所は公告を行い、一般に競売の情報を公開します。
競売の実施: 競売は、裁判所の管理の下で行われます。入札者は入札を行い、最も高い金額を提示した者が資産を落札します。
代金の分配: 落札金は、まず競売にかかる費用の支払いに充てられ、残額は債権者に分配されます。複数の債権者がいる場合は、債権が同順位である場合は(貸付金債権や売買代金債権などは同順位です)、債権額に応じて比例配分され、優先的に弁済される債権がある場合は、その優先順位に従って分配されます。
債務者への影響: 強制競売によって債務者は所有権を失います。また、競売で得られた金額が債務の全額をカバーしない場合、債務者は残りの債務を引き続き負担することになります。
5.強制管理とは
強制管理は、特定の財産、事業、またはその他の資産について、裁判所が指名した第三者(管理人)によってその管理が行われ、その収益を債権者の債権の弁済に充当する法的プロセスです。
強制管理の目的
資産の保護:財産や事業が損失や損害から保護される。
公正な処理:債権者や関係者間で公平な資産の分配を確保。
強制管理のプロセス
裁判所による管理人の指名:裁判所が管理人を指名。
管理と運営:管理人は、事業の運営、資産の管理、債権者への弁済などを行う。
報告と監督:管理人は定期的に裁判所や関係者に現況を報告し、裁判所の監督下で活動。