2022.10.21 相続
相続・遺産分割事例紹介 12
解決事例の紹介
【相談内容】
Aさんからの相談で,別居してアパートで1人住まいをして10年前から日雇い労働をして,その日暮らしの生活していた父親が5年前から行方が分からなくなり音信不通な状態が続いていた。半年前に父の死亡を知ったが,無資産の父だと思っていたので,相続放棄(民法915条1項)の処置をしませんでした。
ところが1年半後に,金融業者から800万円の借入金の連帯保証人に父がなっていたことが分かりました。
金融業者から支払いの督促を受けたので,困って相談に来られました。
【交渉結果】
Aさんは父には財産が全くないと信じていたので相続放棄の手続きをしなかったものです。
最高裁判例(昭和59年4月27日)は,「特段の事情があるとき」は「熟慮期間(相続するか放棄するかを感える期間)は,相続財産の全部または一部の存在を認識した時又はこれを認識し得べき時から起算する」としている。
本件のような場合は,3か月以内に相続放棄をしなかったが,父に財産が全くなかったと信じることについて相当性があるといえるので,「特段の事情」に該当すると判断し,家庭裁判所に相続放棄の申述手続きを行いました。
裁判所には,Aさんが父親に財産があるとは判断できなかった状態及び父親が借金の保証人になることなど予想できなかったこと等を立証することを行い,結果として相続放棄が認められました。
【弁護士からのコメント】
相続放棄は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません。
相続財産が複雑で,その調査に時間がかかるときは,家庭裁判所に期間の延長を申し出ることが出来ます(民法915条1項但書き)。