再生手続には、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とがあります。
手続の対象となる債務者の資力要件として、前者では「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」者となっているのに対して、後者は、前者の債務者のうち、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる」者とされていますので、後者は前者のいわば特則的な手続と位置づけられます(たまに名称から勘違いをされる方がいるのですが、給与所得者、いわゆるサラリーマンでも小規模個人再生手続を申し立てることは可能です。)。
この2つの大きな違いは、再生計画の認可に当たって小規模個人再生手続は再生債権者の決議を経る必要があるのに対し、給与所得者等再生手続はその必要がないことです。すると、後者の方が、難易度が低いかのように思われますが、実際に個人で再生手続を申し立てる場合は小規模個人再生を選択することがほとんどであり、給与所得者等再生を選択する機会はまずありません。なぜでしょうか。
それは、給与所得者等再生手続では、債務者の可処分所得の2年分を弁済総額としなければならないところ、この可分所得とは、債務者の収入から公租公課と最低限の生活費を控除した額となるために、小規模個人再生手続の場合よりも弁済総額が高額となり、再生計画履行のハードルが高くなる場合が多いからです。
したがって、個人の再生手続を申し立てる場合は、まず小規模個人再生手続の申立を検討し、再生債権者の不同意により再生計画案が可決されない可能性がある場合に限り給与所得者等再生手続への移行を検討することになります。