現在は、インターネットが普及したことにより、情報を世界に発信することができるようになっています。特に近年のSNSの普及により、誰でも気軽に投稿や発信ができるようになりました。
しかし、このとき気を付けたいことの一つが他人の名誉やプライバシーを侵害することです。匿名掲示板の投稿は誰も信じるわけないのだからと考え、安易に投稿してしまうと、思わぬトラブルになりかねません。
最高裁判所平成22年3月15日決定(刑集 64巻2号1頁)は、以下のように示しました。
個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって,おしなべて,閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって,相当の理由の存否を判断するに際し,これを一律に,個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして,インターネット上に載せた情報は,不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり,これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること,一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく,インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると,インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない
名誉毀損罪は、他人の名誉を毀損した場合に成立するものですが、表現の自由に対する配慮から、公共性、公益性があり、かつ、真実であることが証明された場合、または、真実であると信じるにつき相当な理由がある場合には、名誉毀損罪は成立しないと解されています。
上記判例では、インターネットの個人利用者が安易に投稿したものであるからといって、判断基準が緩やかになるものではないと判断しました。
何かを発信するということは、ときには誰かを傷つけてしまうということを心にとどめ、安易な考えで情報を発信しないことが大切です。